代表あいさつ -関東甲信越地区

慶應義塾大学医学部
麻酔学教室・慶應義塾大学病院痛み診療センター
准教授

小杉 志都子

慢性の痛みは、日常生活や社会生活を著しく障害し、生活の質の低下だけでなく、就労制限や健康寿命の短縮にもつながります。日本人の5人に1人は慢性痛を有していると推定されており、たいへん多くの方が痛みに苦しんでいます。慢性痛は神経や筋骨格の要因だけでなく、心理社会的な要因が複雑に関連します。その病態について、未だ解明されていないことも多く、慢性痛を有する患者さんは、周囲の人々や医療者から理解されず心身ともに苦しむことも少なくありません。慢性痛の治療では、その病態を多面的に分析し治療する仕組み(集学的治療)の有用性が海外で多く報告されていますが、日本では多職種による集学的診療体制を整えた施設は未だ少なく、さらに十分な知識と医療技術をもった医療者の不足や診療報酬制度上の制約から、集学的疼痛診療を提供する医療機関や医療者の数は十分ではないのが現状です。このような状況を打破する目的で、厚生労働省において、慢性疼痛診療システム均てん化事業が立ち上がりました。本事業の役割は、①痛みセンターの存在を一般の皆さまにも明らかにすること、②かかりつけ医(連携施設)と各痛みセンターとの連携を作ることで、患者さんが治療を受けやすい環境を整えること、③慢性痛診療に専門性の高い多種の医療従事者を育成すること、にあります。関東甲信越地区の8つの痛みセンターを中心に、多くの患者さんのお役に立てるよう、本事業に取り組んでまいります。